華代ちゃんシリーズ番外編
真城華代の世界
作:天爛
始まりは青年と少女だった。
「おにいちゃん、お悩み事ですか?」
少女の名は真城華代。
「あっ、私こういう者です」
青年は秘めし思いを打ち明ける。
「ぼくは彼女が悲しむ顔を見たくない」
そしてそれは真摯な願い。
「ぼくが彼女に笑顔を取り戻してあげたいんだ」
その思いは少女に届く。
「大丈夫、どんな悩みでも解決できるようになりますよ」
青年は気づかない。その言葉の真の意味に。
「何だか自信がわいてきたよ。ありがとう。……君みたいな子ばかりなら、この世から悩みなんで無くなるんだろうね」
そう言うと青年は、『彼女』の悩みを解決するために走って行った。
「がんばってね」
少女はエールを送る。走り去ったその影に。
『おねえちゃん、お悩みごとですか?』
影は『彼女』に尋ねる。
「おねえちゃん、お悩みごとですか?」
影の名は真城華代。
「あっ、私こういう者です」
『彼女』は秘めし思いを打ち明ける。
「私、好きな人がいるの。とても優しくていつも私を見守ってくれている人」
そしてそれは真摯な願い。
「私、その人と一緒になりたい。私じゃ役不足かも知れない。けど、私は彼の夢を手伝って行きたいの」
その思いは影に届く。
「大丈夫、きっと一緒になれますよ」
『彼女』は気づかない。目の前の少女がその『彼』と言うことに。
「ありがとう。私がんばる」
そうして『彼女』たちは別れた。
「がんばろうね」
青年の願いを叶えるために。
『君みたいな子ばかりなら、この世から悩みなんで無くなるんだろうね……』
そして数日後、世界の半分は『少女』になっていた。
「た、大変です。第369最終防衛ライン突破されました」
そこは全世界対『少女』対策作戦本部。
「またも防衛に当たっていた兵はすべて敵軍に取り込まれたようです」
オペレーターが押えきれぬ恐怖の感情を押し殺す様、冷淡に報告する。
「くそっ、またか」
それを指揮する最高権力も焦りの色を隠せない。
「なにか手はないのか。アレに対等以上に対抗できるような優れた戦力がっ」
思わず弱気が見え隠れする。
「ありますよ?」
そしてそこに差し出される救いの手。
「ホントかっ、いやこの際嘘でもいい。とっとと用意しろ」
藁をも掴む思いで乗った船が泥舟だったと気づく間もなく発言者が答えた。
「わかりましたっ、私に任せてください」
そうして全世界対『少女』対策作戦本部は世界の半分を占める『少女』と全く対等な戦力を手に入れ
そして世界のすべてが真城華代となった……