「今週の土曜だぞ。覚えているだろうな?」
あの頃、僕たちはお互い何の蟠りもなくはしゃぎあっていた。 |
【天体観測】 |
「はぁはぁ」 僕は夜の闇の中、走っていた。誰かから逃げてるわけでもましてや悪夢を見てるわけでもない。単に友達との約束に遅れそうだから急いでるだけだったりする。 僕の名は奥里空(おうりそら)。小学5年。 とか言ってるうちに望遠鏡を担いだ人影が見えた。十中八九、約束相手だ。 「ごめんごめん、準備に手間取った。」 僕達はそれからフミキリ脇の土手に望遠鏡を設置し、晴れ間が射すのを待った。流星が降るのは2時35分、約30分後だ。 「なあ。空?」 沈黙を破ったのは流からだった。 「……、まあいいか。」 「でも、さびしくなるな。」 「……そうだ。」 |
《おことわり》 |
《後書きというかなんちゅうか》 |
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あれから10年……。 あいつはまだ来ない。そういえば確か10年前も遅れて来たな……。 「ごめんごめん、準備に手間取っちゃった。」 そう10年前と同じ言葉を言って振り向いた先に、10年前と同じように大げさな荷物を背負って息を切らしてるそらがいた。 そう、『空』ではなく『そら』。 そしてそらの家族は世間体を気にしてこの町を引っ越した。 俺はそれを知ったとき怒った。それまで生きていた中で1番怒ったと思う。 あれはずるい。 「……れ、…流、お〜い、ながれ〜。」 「な、なんだよ。」 「懐かしいよな……。」 その日、俺たちは手を握りあって空を見上げた。 ――大丈夫だよ、もう離れたりしない。これからはずっと…… 「ん? なんか言ったか?」 静粛の中、満天のそらがそこにはあった。 |